2023年10月

2023年10月24日

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ピッグスキンについて少し。

革といえば誰もが牛革をイメージされると思います。僕も少し前まではそうでした。

実際に仕事でピッグスキンを扱う(革靴の縫製をする時に内側によく使われる)機会が多いにも関わらず、そんな感じでした。その存在にほとんど目を留めていませんでした。

その意識が変わったのが3年ほど前。
ご多分に漏れず、円安やコロナがきっかけでした。僕がよく使っているイタリアの牛革もモロに影響を受けました。

値段が短いスパンで上がる。仕入れるたびに上がる。グングン上がる。とにかく上がる。こんなことは今までありませんでした。

上がるだけならまだしも、最悪の時はいつ入ってくるかわからないこともありました。革屋さんに聞いてもわからないの一点張り。

革を仕立てることを生業としている身にとっては食料が入ってこないも同然。もう恐怖でした。これからの自身のものづくりのあり方を根本的に考え直さないといけないなと思いました。

そんな時にピッグスキンの存在にあらためて気づきました。

「国内で自給自足できる唯一の革」

このことがこの上なく頼もしく、心強いものに感じました。ただ、ひと口にピッグスキンといってもピンキリで。僕の指向しているものづくりに合いそうな革になかなか辿り着けませんでした。

「やっぱりムリか…」と諦めかけていたころ、厚み、質感、経年変化の具合も良さそうで、かつヒトにも地球にもやさしい製法にこだわってつくられている革に出会いました。

いずれは土に還る革。
それがいま現在、使っているピッグスキンです。

軽くて
薄くて
丈夫で
しなやか

このピッグスキンに出会ってから、いかに仕立てればこの革のポテンシャルを最大限に引き出すことができるか、そのことばかり考えています。

最も意識しているのは“作り込みすぎない”こと

素材そのものを味わえるように
よりプリミティブに

そして傷もシワもできるだけ取り入れること
それらは生きてきた証、勲章

僕がこの革を使うことで、ひとりでも多くの方にその魅力をお伝えできれば。そんなことを考えながら、日々制作にいそしんでいます。


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